ラボの女所長が惨殺されてから1ヶ月が経った。

所長の死に一番ショックを受けたのはやはりその娘たちであった。今でも光景が頭から離れない。

警備員の制止も聞かず部屋に飛び込んだときはあたり一面血の海だった。

首から上が無い奇妙な物体にのしかかれた男の被検体が口から泡を吹き、白目を剥いて絶命していた。

そして床には母親と数人の練習生が変わり果てた姿になっていたのだ。

あとから入ってきた警備員は現場を見た途端口に手を当て、胃から内容物を吐いていた。

 

ラボの機密上、内部のことは漏らすことができなかった。従って警察には届けず内々で処理するほかなかった。

助手を務めていた美香がDという会社に問い合わせてみた。性能テストを依頼してきたクライアントである。

「いったいどうしました?」

しわがれた男の声が電話口にでた。丁寧な言葉遣いだが下卑た声だ。

「実はそちらから依頼を受けたアンドロイドのデータ採取中に死亡事故が起きまして・・・」

「なんですと?ああそれでデータがまだ届いていないのか・・・失礼。弊社の製品で大変なことになりお悔やみ申し上げる。」

「ええほんとうに大変なコトになりましたわ・・・それで責任者の方おられます?」

「私が社長の卯の花為蔵ですが?」

「失礼しました。それで少々疑問に残るのですが、問題のメス検体を解剖したところ顔面の表情筋が使用された形跡が・・・」

「といいますと?」

「つまり笑うか怒るか、なんらかのしぐさを示したかと思われます。同封の取説には余分な情緒機能は持ち合わせていないとのことですが・・・」

「それはありえませんな。3体とも前頭葉は切除してますし感情ラインは薬品で抑えてますから・・・」

「とにかく他の検体もただちに当局でのテストを中止しそちらに送り返させてもらいますので・・・」

「ほほお・・・そんな措置をおとりになられたら国から研究費用を削られますぞ?」

「ええ承知の上です。それでは明日の便で発送いたしますので・・・」

「よろしい・・・ただ立会人が要るのでどなたか同行願いたい・・・貴方でよろしいか?」

「わかりました。明日から3日は予定がありませんので・・・それでは失礼いたします」

「おまちしております」

10分ほどの会話の後、美香は通信を切った。

 

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